bookmark_border遅いアプリがビジネスに与える影響

入門監視(Mike Julian 著, 松浦 隼人 訳, オライリー・ジャパン, 2019)のp.77に記載のあった遅いアプリケーションがビジネスにあたえる影響を深掘りしてみた.ここではWebアプリケーションを対象としており,遅さはWebブラウザ上にコンテンツが表示されるまでを想定している.

ソースを探すのに苦労したため,備忘録のために残しておく.

Aberdeen Research

書籍の本文では,以下の記載があった.

Aberdeen Researchの2010年の研究によると、ページロード時間が1秒遅くなると、平均でページビューが11%、コンバージョンが7%、顧客満足度が16%下がると言われています。Aberdeenは最適なページロード時間は2秒以下で、5.1秒を超えるとビジネスに影響が出始めるとしています.

Mike Julian 著, 松浦 隼人 訳, “入門監視”, オライリー・ジャパン, 2019, p.77

2010年にAberdeen Researchから公開された資料のうち,確認できた資料に以下の記載があった.対応する箇所を明確に探すことができなかった.

100% of the best performing companies experienced an increase in year over year revenue growth compared with only 11% of Laggards

Chris Houpis, “Sales and Marketing Alignment Collaboration + Cooperation = Peak Performance”, Aberdeen Research (2010)

ShopzillaとAmazon

Shopzillaの事例を本文では次のように紹介している.

Shopzillaのページロード時間が6秒から1.2秒に短くなった(https://www.youtube.com/watch?v=Y5n2WtCXz48)ことで、売上げが12%増え、ページビューも25%増えたとしています。またAmazonはロード時間が100ms改善するごとに売上げが1%増えることを突き止めました(http://bit.ly/2y494hq)。

Mike Julian 著, 松浦 隼人 訳, “入門監視”, オライリー・ジャパン, 2019, p.77

Shopzillaに関するYouTubeにアップロードされた動画は以下にあった.動画内の1:21から説明しているスライドでConversion Rate(CVR)が7% – 12%増加したことが説明されており,本文の内容と一致している.スライドの中で6秒から1.2秒に短くなったことやページビューの25%増加は確認できなかった.

Amazonの事例はリダイレクト先のリンクが切れていた.同様の記述は以下の記事にあった.

bookmark_border春から博士後期課程に進学します

はじめに

2023年4月からサポートエンジニアとして働いています.修士卒で新卒入社した社会人1年目です.先日,博士後期課程の入試を受験し合格しました.2024年4月から社会人学生として博士後期課程へ入学します.

分野はコンピュータサイエンス(特にクラウドコンピューティング,ログマネジメント)です.

学部から修士までの間で以下の業績がありました.

  • 査読つき国際会議(英文) 2編
  • 査読つき論文誌(和文) 1編
  • 査読なし研究報告(和文) 2編

主な動機

主な動機は2つあります.それぞれを以降で述べます.

(1) 博士前期(修士)でやり残したことがある.

博士前期で研究活動に取り組み,次第に自分の未熟さに気づくようになりました.関連研究の調査を通じて最先端(state-of-the-art)を知るほど,自分の研究内容がいかに不足しているか次第にわかるようになりました.独創性のある斬新(novel)な研究を目指したいと思いつつ,そのためのスキルが不足していることにもどかしさを感じていました.博士前期課程の2年間では不足を埋めるための時間が圧倒的に足らないことに気づきました.博士前期課程でやり残した研究内容の不足を埋めて,最先端の研究に太刀打ちできるクオリティの研究をしたいという思いから進学しようと決断しました.

(2) 世界的にみれば専門性を高めるうえで博士号は珍しいことではない.

博士前期を修了する直前の3月に国際会議に現地参加し,海外の博士課程の学生が高いモチベーションで研究に取り組んでいることを知りました.彼らの中には,研究者ではなくソフトウェアエンジニアを目指している人もいました.海外の学生と話す機会を通じて,博士号は研究者だけに必要なものではなく,それ以外の仕事をする人にとっても価値のあるものだと気づきました.

その他の理由

指導教員から勧められた.

学部〜博士前期の指導教員から博士後期を博士前期の修了直前にすすめられました.このことがきっかで進学を考えるようになりました.指導教員は,グローバル企業のインドやアメリカにある拠点で仕事をした経験があり,その勧めに説得力がありました.

周囲に博士課程へ進学した方がいた.

会社の同期や一緒にイベントを運営しているメンバー,Twitterで見かけるエンジニアの方々,インターンやアルバイトでお世話になった方々に博士号を取得されている方がいました.そのため,進学することが決してめずらしいことではないという考え方ができました.

FAQ

博士前期(修士)から博士後期へ進学しなかった理由は?

修士1年の終わり頃でその決断ができずにいました.就職活動も修士1年の2月に終えたので,そのまま就職しました.国際会議でもっと早く刺激を受けていれば,そのまま進学していた気がします.

仕事との両立はどうするのか?

しばらく仕事を続けながら研究に取り組む予定です.会社からは研究に対して制限/支援は無さそうなので,業務外の時間に個人として取り組む予定です.進学するにあたりグローバルの法務部門へ利益相反がないかは確認をとりました.

学費はどうするのか?

幸いなことにも会社の給与で学費が捻出できているため,いまのところ金銭面での問題はなさそうです.仕事をやめた場合は奨学金を借りるかもしれません.

進学先はどう決めたか?

学部と博士前期(修士)に在籍していた研究室にしました.当時の指導教員の在任期間が2年しかないため,別の先生に指導教員になっていただきました.

おわりに

博士前期に比べて博士後期は困難が数多くあることが知られています.辛くモチベーションが下がったときに,進学を決意したときの気持ちを思い出すためにもこの記事を書いています.また,博士後期を目指そうと思うどなたかの役に立てば幸いだと思っています.

付録

博士後期課程への進学の参考になったリンクを貼っておきます.

bookmark_border初めて論文が引用された体験

修士2年の最後に書いた論文をGoogle Scholarで検索したところ,被引用数が1になっていた.

Citation: 1 (出典 Google Scholar)

今までに自分の書いた論文が引用される経験がなかった為,引用されたことに驚いた.それと同時に自分の成果が世界中からアクセスでき,第三者から参照されることを改めて実感した.最近,被引用数のスコアであるH-Indexを知っただけに,初めて論文が被引用された経験は嬉しかった.

bookmark_border修士課程を終えて

自己紹介

東京工科大学に学部と大学院をあわせて6年通いました.所属していた研究室はクラウド・分散システム研究室です.高校生ぐらいからネットワークやサーバをはじめとした分散システムに興味があり,個人的にLinuxでWebサーバやDNSサーバを構築していました.大学の入学後もセキュリティ・キャンプやイベントNOCチームへ参加していました.

大学の入学当初

学部1年の入学当初から早く大学を卒業して就職するつもりでした.なぜなら,第一志望でなく浪人して入学したためです.入学当初は大学の良さが分からずにいました.就職を意識していたこともあり, 学部1年から3年まではいくつかの企業でインターンシップやアルバイトに勤しんでいました.特にヤフーでの黒帯インターンシップは自分の目標とするエンジニアに出会えた良い経験でした.企業でのインターンシップやアルバイトの経験を通じて自らの技術力を把握できました.また,就職する際のイメージを具体的にできました.

研究室への配属

ネットワークや分散システムに興味があるため,クラウド・分散システム研究室を選びました.指導教員は企業から大学に着任されたこともあり,グローバルで働いた経験や専門性で尊敬できる方でした.一方で要求されるレベルの高さに配属当初は苦労しました.研究室では個人ごとに半期に1本のテクニカルレポート(2段組み,6-8ページ)の執筆が要求されます.配属されるまで6-8ページにおよぶ技術的なレポートを執筆した経験がなく当初は戸惑いました.振り返るとテクニカルレポートの作成は良い経験だと思います.特に文章や図で的確に説明する能力は向上しました.

大学院(修士課程)への進学

ある程度実務の経験があるため,学部卒である程度のIT企業には就職できる自信がありました.自分の実力を伸ばすために時間とお金を費やして大学院に進学するのも良い良い気がしました.経緯や参考になった書籍は下記の記事で紹介しています.

就職すべきか進学すべきか、それが問題だ | クラウド・分散システム研究室

大学院(修士課程)を振り返り

大学院への進学はとても良い選択でした.特に英語力や専門性,論理的な思考力や精神的な強さが進学前に比べて格段に向上しました.いつも”苦労しながら障壁を超える経験”を繰り返し,成功体験や自信を重ねてきた結果だと思います.

研究のテーマ決めや論文執筆,実験やデータ解析は苦労の連続でした.特に英語で論文を執筆する作業は基礎的な英語のスキルが足らずに苦労した記憶があります.3時間で数行しか書けず挫けそうになったことをよく覚えています.足りない実力は時間でカバーしようと休日も含めて最大限に時間を費やしました.何事も出来ないままにせず,出来るように努力することが大切だと思いました.

インドにあるAmity University Mumbaiの学生との研究プロジェクトも苦労した経験でした.英会話をする経験が少なく最初は大変でした.一方でこのプロジェクトで英語での会話をする機会があったおかげか,ポルトガルで開催された国際会議では英会話への抵抗感がまったくなかったです.インドの学生から学ぶこともありました.インドの学生は成果を残そうとするモチベーションの高いです.彼らはたとえ大学へ進学しても成果物がなければ良い仕事につけないそうです.IT業界のグローバル企業でインド出身者が多い理由が分かった気がしました.

今後の展望

2023年3月に大学院を修了し,2023年4月からAWS Japanに新卒で入社しました.仕事でも分散システムやクラウドに触れていく予定です.大学院でやり残したことはあるため,社会人大学院への進学を考えています.自分が納得いくクオリティの成果を出したい気持ちがあります.ご飯や呑みの機会があればぜひ声をかけていただけると幸いです.

干し芋リスト

bookmark_border学部ブログへCIoT’23の参加報告を寄稿

所属している東京工科大学大学院コンピュータサイエンス専攻のブログに以下の記事を寄稿しました.

bookmark_border研究に役立つChrome拡張3選

これ系の記事にニーズがあるか分からないが書いてみる.

(1) Google Scholar

BibTeXで参考文献を管理するときに役立つ.Google ScholarのChrome拡張からBibTeXを出力すると,ACMやIEEEから出力する場合に比べて形式が統一される.BibTeXの形式を統一する手間が減るので,常用している.

https://chrome.google.com/webstore/detail/google-scholar-button/ldipcbpaocekfooobnbcddclnhejkcpn?hl=en

(2) Unpaywall

論文が無料公開されているとき,ブラウザ画面の右端にアイコンが表示される.プレプリントを探しに行く手間が減るのでよい.

https://chrome.google.com/webstore/detail/unpaywall/iplffkdpngmdjhlpjmppncnlhomiipha?hl=en

(3) Grammarly

文章を書きながら構文のミスを修正したいときに役立つ.完璧ではないが細かなミスを気づけるので役立つ.有償版を契約する価値はあると思う.

https://chrome.google.com/webstore/detail/grammarly-grammar-checker/kbfnbcaeplbcioakkpcpgfkobkghlhen?hl=en